森の中に一歩入ると、空気が変わったように感じることがあります。
ひんやりとした静けさ、木々の匂い、足元の土のやわらかさ。
しばらく歩いていると、いつのまにか呼吸が深くなっている。
そんな経験をされた方も多いのではないでしょうか。
では、森の中で気持ちよく感じるのは、なぜなのでしょうか。
木々がつくる、澄んだ空気
植物は光を受けて、二酸化炭素を取り込み、酸素を送り出しています。
私たちが吐いた息を植物が受け取り、植物が送り出した酸素を私たちが受け取る。
森の中では、その循環がすぐそばで起きています。
加えて、土や落ち葉の湿り気が空気に潤いを与え、木々が舞い上がる塵をやわらげます。
森の空気を心地よく感じるのは、こうした自然の働きが重なっているからです。
森の香りが、身体に届く
森に入ったときに感じる、あの独特の香り。
あれは樹木が放つ「フィトンチッド」と呼ばれる成分によるものです。
もともとは樹木が自らを守るために出しているものですが、その香りに包まれると、私たちの身体も自然とゆるんでいきます。
香りは、鼻から入って直接的に脳へ届きます。
「なんとなく落ち着く」という感覚の背景には、こうした働きがあります。
五感がひらく時間
森林浴の心地よさは、空気や香りだけによるものではありません。
葉のあいだから差し込む、揺れる光。
風が枝を通り抜ける音、遠くの鳥の声。
足裏に伝わる、土の不揃いな感触。
画面や文字ばかりを追いかけている日常とはちがい、森の中では五感が自然と敏感になっていきます。
歩くリズムに合わせて呼吸も深くなり、身体は少しずつ休息のほうへ傾いていきます。
森林浴は「呼吸を思い出す時間」
近所の公園の木陰で、しばらく座ってみる。
並木道をいつもより少しゆっくり歩いてみる。
それだけでも、身体は確かに応えてくれます。
スマートフォンを一度しまって、ゆっくりと息を吸い込む。
その数分が、こわばった心と体をリラックスさせます。
